“滅びゆく日本に警鐘”世界的投資家 ジム・ロジャーズ氏来阪シンポジウム②パネルディスカッション

“滅びゆく日本に警鐘”

②パネルディスカッション

 

2019年9月15日 13:30~15:30
於:リーガロイヤルホテル大阪「ロイヤルホール」
 

 

ジム氏を交えて行ったパネルディスカッションでは、司会進行役の小里 博栄(ハリー)氏(株式会社LA DITTA SINGAPORE 代表)の他、3名の経営者により、多様な視点で日本の現状や未来に目指すものを語っていただきました。
◆斎藤 祐馬氏(デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長)
◆小林 りん氏(ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン 代表理事)
◆吉川 稔氏(東邦レオ株式会社 代表取締役社長)

 

キーワードは日本を〈chenge〉し〈save〉する発想力。

そして〈speed〉ある決断と実行力。

 

小里 博栄氏(以下、ハリー)
「日本人の皆さんが、自身で考え行動せよ」というジムの言葉を受け、小林さん・斎藤さん・吉川さんに入っていただき、一緒に考えていきたいと思います。

私たち自身が、日本を変え、救わなければならない。
では、何をしていけば良いのでしょうか?

 

小林 りん氏(以下、小林)
私はまさに現場で〈chenge〉と〈save〉の種を撒いています。
学校教育では多様性、問いを立てる力、困難に挑む力、この3つを重視しています。

まず多様性という点ですが、生徒の75%は海外から来ています。

70%は給付奨学金を受けて勉強しています。
彼らを見ていると、日本は変わり始めていると感じます。

問いを立てる力というのは、自分でまず問題を見つけることです。

社会一般には与えられた問題を解くことに目が行きがちですが、そうではなく、いま求められているのは、自分で問いを見つけることだと考えています。
自分で動かす、世界に変化を起こすには、自分でまず問いを立てなければなりません。

 

リーダーシップには困難に挑む力も重要です。
今日、周囲が過保護になりすぎだと思います。
温室の中ではわからないことを教育の場で提供したい。
そのなかでこそ、少々困難であっても、世界を変えるんだ、とはっきりとした意思をもって動く子が育つと思っています。

 
斎藤 祐馬氏(以下、斎藤)
私の場合は8年前、社内起業でベンチャーを支援するビジネスを起こしました。
具体的には、大企業とベンチャーの連携サポート、資金調達、国際的なチーム作りですね。
これまで30社がIPOを実現しました。
中には30代でエグジットしたところもありますが。

起業家にかかわってきて感じるのは、2010年以降は起業家のレベルが非常に高いということです。

それ以前でいえば、いわゆる優秀な人なら大企業、外資系企業に入るケースが多かったのですが、ここ10年はそういう人たちが起業しています。

 
吉川 稔氏(以下、吉川)
ここ10年の起業という話をなさいましたが、以前は海外のものを日本に取り入れるビジネスモデルが多かったように思います。
海外のトレンドを日本にもってこよう、というスタンスですね。
それが10年前、これは違うぞ、と思い始めた。
自分たちで課題解決をする取り組みをしていかなければならないんじゃないか、と。

そのひとつが「クール・ジャパン」です。

日本の企業は技術力が高い。
その一方で足りないのは、クリエイティブ――センス、自分の中からの発想力だと思います。
日本の中小企業は、高い技術力をもって海外市場に何を提供するか、自分たちの強みは何かを考え、新たな価値を創る、イノベーションを起こす時期に来ているのではないでしょうか。

 

パネル

 

ジム 
言われた通り、変化は重要です。しかし、時間がないのです。
悠長に考え、前進していく余裕はありません。日本にいるか離れるか、決断を迫られるときはすぐそこに迫っています。
ハリー
スピードが大事ということですね。
先日、堀場製作所の堀場さんと話をしましたが、新しい商品はたいてい海外からくる、日本はモデルチェンジが得意なのだと。
新しいものを作る力をもつために私たちが何をすべきか、考える必要があるでしょう。

 
小林 
私自身も、スピード感が鍵だと思っています。
教育現場で思うことは、失敗を恐れない人を育てるというだけでなく、社会がもっと失敗を許すべきではないか、失敗に寛容になるべきではないかということです。
私たちはこれまでの学校制度とは違う人を育てようとしていますが、それでもまだ偏差値主義が一般的で、教育現場もその影響を受けています。
失敗を許す・・いえ、失敗をバンバン許す社会であってほしい。
安全だから、とこれまで通りのことを繰り返しているのではだめですし、ただモデルチェンジで満足していてもだめです。
いまは、これまでダメだったことをどんどん試していく時代だと思っています。

 
吉川
いまの問題提起を企業に移して考えると、組織の硬直性が問題になると思います。
変えよう変えようといっても、なかなか変わらない。
当社はいったん組織を大きく作り変えました。
3年かかりましたが・・ティール組織にしたのです。
スピードを大事にしていこうというとき、個人の壁となって立ちはだかるのは組織です。
組織の柔軟性を高め、ナレッジを共有していかないと何も変わりません。

 

ハリー 
日本企業は素晴らしいものをたくさん持っています。
ただ、ドラスティックな変化ができない。
英国の電気機器メーカー、ダイソンは2019年に本社をシンガポールに移しました。
その大胆さ(boldness)、時代にあわせ、社会情勢にあわせ、恐れずどんどん変革していく大胆さは日本企業には見られないように思います。
日本企業は慎重なところがほとんどです。先進的な企業はたくさんありますが。

 

斎藤 
起業には、事業領域、市場、チームが重要だと考えていますが、そのバランスを上手にとって成功するのはシリアル・アントレプレナー(連続起業家)ですね。
いまその数も増加しています。

スピードや大胆さの話でいえば、当社のお付き合いのある企業は実際遅いですね。

でも、オーナー企業は早いです。いったんオーナーが決めると早い。
これからはオーナー企業が日本企業のやり方を変えるかもしれません。
日本にこだわらず、いかにグローバルに価値をうち出していくか、どのように変革を実現していくか。
まずはインターンからでいいので、外国人を入れることを考えるのもひとつだと思います。
チームは日本人だけで固めるよりも、外国人と組むことで、それまでできなかったことができるようになるのです。

 

会場の様子

 

ハリー 
皆さん有難うございます。ここで少し話題を変えましょう。
ジム、アメリカからシンガポールに移ったいきさつは。
なぜシンガポールを選んだのですか。
ジム 
19世紀は英国の世紀、20世紀はアメリカの世紀、21世紀はアジアの世紀といわれます。
そこでアジア、ということになりますが
――娘にはこれからの子どもたちに必須となる(標準)中国語を習わせています。
ニューヨークに住んでいてももちろん中国語の勉強はできますが、
日常的に中国語を使う必要のある環境を整えることが大事だと考えました。

シンガポールを見たところ気に入ったので、家族で荷物をまとめて移住に踏み切ったわけです。

私にとっても天地がひっくり返るような変化でした。
日本人にはなかなか考えられないかもしれませんが・・

 

繰り返しになりますが、この人口減少をどう解決するか、
日本人は自分たちで考えなければなりません。

いま10歳の子どもは10年後どうするのでしょうか。
生活水準は下がる一方です。
子どもたちに我慢しろというのでしょうか。
危機感をもたなければなりません。

 

私自身、47歳でオートバイ世界一周をし、57歳から3年間は車で世界一周をしました。
そして60歳で子どもに恵まれています。

年齢に縛られる必要はありません。

世界の変化を読んでどんな手を打つべきか、私はない知恵を絞っていつも考え行動しています。
皆さんも、日本の問題をどう解決していくべきか、知恵を絞って考えていってほしいと思います。

 
◆“滅びゆく日本に警鐘” 世界的投資家 ジム・ロジャーズ氏来阪シンポジウム ③理事長挨拶 へ

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