NPO法人 ノーベル 代表 高 亜希様にご講演いただきました。

4月6日(水)、一般財団法人レオ財団の月例会&勉強会が行われました。
 
今回、お二人の講師にご登壇いただきました。
お一人目は、「NPO法人 ノーベル」代表の高 亜希さんです。
高さんの主催するノーベルは「訪問型病児保育」を行うNPO法人です。「病児保育」とは子どもが病気になった時に、親が勤務などで付き添えないケースにおいて、スタッフが病児の家を訪問して預かるという事業です。
高さんにはこの病児保育に関し、「多様化する社会問題 これからの時代に必要なこと」と題してお話いただきました。

 
各地の大学に講演に行き、学生に将来結婚をしたいかと尋ねると80%が手を挙げます。また、子育てと仕事を両立させたいかを聞くと、そのうちの80%が手を挙げます。
それにも拘らず、現実は第一子出産後に60~70%のお母さんが仕事を辞めています。なぜそうなるのでしょうか?
男性の育児休暇取得は2%、家事や育児は女性がするという価値観や慣習が根底にあるようです。
 
近年、行政は待機児童の問題を解決すべく保育所の政策に力を入れ、その数も増加傾向にあります。ところが一般的な保育所では子どもが37.5度以上の熱を出した場合、母親に連絡が入り帰宅を強いられます。仕事をしている母親は保育所に子どもを迎えに行き、仕事を休まざるを得なくなるわけです。「病児保育」の出来る施設や運営団体は殆どありません。大阪市内ですら8箇所しかないのが実情です。
 
幼児は統計的に年間平均30日発熱すると言われています。その対応で仕事を辞めざるを得ない母親が多くいるのも事実です。こういう状況を少しでも改善し、お母さんが安心して働けるようにと、ノーベルは2010年から「訪問型病児保育」を事業化しています。
 
しかし、いつ起るかわからない、需要予測の不可能な事業のために施設やスタッフを準備することは大きなリスクであり、運営の安定は見込めません。そこで、ノーベルでは利用してもしなくても月々の会費によって運営される訪問型の「病児保育」共済事業を立上げたのです。会員の方は朝の8時までに連絡を入れれば100%対応、感染症も麻疹(はしか)以外は対応してもらえるサービスを受けることが出来ます。
 
大阪は、日本で一番「一人親家庭」が多い都市で、そのうちの約90%が母子家庭です。そして、そのお母さんの半数が非正規雇用で働き、年収は200万円以下が殆どです。このようなお母さんの子どもが保育所で発熱し、会社を休んで子どもの対応をしていると収入が減ったり、解雇されたりという状況に陥ります。その結果、生活保護を受けることとなり、子どもの貧困へと連鎖していきます。
この連鎖を断ち切るために出来るだけ多くのお母さんが「訪問型病児保育」を受けられるよう、寄付を募り、行政や企業と連携して運営経費の負担減を図っています。
今後は、「病児保育」という川下でのサポートだけではなく、そもそも「病児保育」の必要のない街づくりを目指していきます。
 
お金のあるなしによって地域社会の人々が受けられるサービスに格差が生じることなく、人と人との繋がりや助け合いで解決できればと考えています。助けて欲しい人と助けてあげたい人(病児を預かって欲しい人と、預かっていいよと思っていただける子育て経験者)をマッチングさせ、地域社会が一体となって働く女性をサポートできるようにしたいと思っています。
 
現在グーグルから支援金をもらって、母子家庭で「助けて欲しい人」とご厚意で「助けてあげたい人」をネットワークで結ぶスマホアプリの開発を行っています。このアプリは、働く女性の子育て支援はもとより、もっと幅広いジャンルでの助け合いを視野に入れています。これからはリアルな人と人との繋がりをテクノロジーで如何につなげていくかが重要になります。
 
子どもを産んでも当たり前に仕事を続けられる社会の実現に向けて、人と人との繋がりや助け合いも社会資本と捉え、それらの有機的活用でこの社会をより良くしようと思っています。
 
「NPOは利益が出ない」があたり前のようになっているなか、高さんは40名のスタッフを擁し、事業として立派に成り立たせておられます。社会に認められ、利益が出るからこそ世の中に役立つことを継続発展させていけます。本当に素晴らしいことだと思います。
非常に興味深いお話を有難うございました。
 
 
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