株式会社細尾 取締役 細尾 真孝様にご講演いただきました。

2月10日(水)、一般財団法人レオ財団の月例会&勉強会が行われました。
 
今回の講師は、株式会社細尾 取締役 細尾 真孝氏。『伝統産業をクリエイティブ産業へ』について、講演していただきました。

 

株式会社細尾は、1200年の伝統を持つ京都の西陣織の老舗。
この30年で着物業界が約10分の1に縮小されるなか、今後事業を50年100年と継続するためには、国内だけではなく海外に目を向けることが必要だと考えるようになりました。

 

2006年にパリで開催された「メゾン・エ・オブジェ」の見本市に西陣織のソファーを出展しましたがあまり良い成果が得られませんでした。翌年にはクッションも出展しましたが、海外百貨店からオーダーを入ったものの、需要を拡大できず成功には至りませんでした。
そして、2008年転機が訪れます。パリのルーブル装飾美術館で「日本の感性価値展」で帯を出展し、翌年アメリカ・ニューヨークで巡回展をした際に、ある一人の建築家の目に留まります。
その人の名は、ピーター・マリノ氏。「クリスチャン・ディオール」「シャネル」「ルイ・ヴィトン」などの旗艦店を手がけている、世界でも5本の指に入る有名なデザイナーもありました。
その依頼された内容とは、クリスチャン・ディオールの上海の旗艦店のリニューアルに伴い、壁面を飾るファブリックとして西陣織を使用したいとのことでした。
そのデザインは、和柄とは全くかけ離れた「鉄が溶けたような柄」だったのです。

 

ピーター・マリノ氏との出会いで、2つの気づきがありました。
先ず、一つ目は、今まで海外と差別化するには和柄でなくてはいけないという既成概念をもっていたことです。彼が求めていたものは、和柄ではなく純粋な西陣織の「技術」を使いたいということだったのです。そしてもう一つは、製品としての物でないと売れないと思っていたのが、物ではなく「素材」であったということです。

 

ただ、一つ問題がありました。それは彼が求める生地幅が150cmだったということです。従来の生地幅では32cmしかないため、どうしても継ぎ目が出てしまい、見た目があまり美しくありません。これを解決するために試行錯誤の末、一年かけて150cmまで織れるように織機を開発することに成功しました。

 

その結果、壁面だけではなく、椅子、ソファー、洋服、インテリアと格段に広がり、今では世界各国で西陣織が使われています。西陣織の「技術」と「素材」が世界に認められたのです。
最近では、現代アート、最先端のテクノロジーとクラフトを組み合わせたものなど、新しいマーケティングを展開しています。

 

そして、私が発起人となり、伝統工芸の若き後継者6人からなる『GO ON』プロジェクトを3年前からスタートしました。
その目的とは、「伝統工芸を活性化させたい」、「子供たちが将来は伝統工芸をやりたい、職人になりたい」といってもらえるようになる、そして「伝統工芸を稼げる産業」にしていくということです。
伝統工芸を完成した商品ではなく分解してグローバルへ、「技術」、「素材」、「ストーリー」をマーケットに合わせて組み替えるという活動をしています。
このGO ONプロジェクトは、それらの活動を推進していくという意味の「GO ON」と先人たちから受け継いできた「御恩」もかけています。

 

海外では「伝統工芸=ラグジュアリー」という言われる中で、日本ほど伝統工芸がある国はありません。
海外のクラフト産業も年々縮小する中で、日本の伝統工芸が注目を浴びるようになり、まだまだ可能性があると考えています。

 

これからも細尾氏の『伝統産業をクリエイティブ産業へ』の挑戦は続きます。

 
 
 
 

■プロフィール
株式会社細尾 取締役 細尾 真孝氏
1978年、西陣織老舗 細尾家に生まれる。
大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。
退職後フィレンツェに留学し、2008年、㈱細尾に入社。
2009年より新規事業を担当。帯の技術、素材をベースにしたファブリックを海外に向けて展開し、ピーター・マリノ氏(建築家)のディオール、シャネルの店舗に使用される。
最近では「伝統工芸」を担う同世代の若手後継者によるプロジェクト『GO ON』のメンバーとして国内外と幅広く活躍中。
2014年日経ビジネス誌『日本の主役100人』に選出。2014年3月『ガイアの夜明け』に出演。

 

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